東京に隕石落下という文字と巨大隕石を描いたサムネイル

更新:2026.07.29

もし、東京に
隕石が落ちたら?

星宮メル
星宮メルねえハルト! もし、いま東京に隕石が落ちたら、どうなるんだろう? わくわくする……けど、ちょっと怖い?
天城ハルト
天城ハルト大きさだけでは決まらない。空で砕けるのか、地面まで届くのか。順を追って見ていこう。
CHAPTER 01 / 条件をそろえる

空で砕けるか、
地面まで届くか。

隕石は、ただの大きな石ではありません。材質、速さ、角度、大気の厚み、地面の性質が絡み合うと、同じ直径でも結果は大きく変わります。まずは、その分かれ道を押さえておきましょう。

星宮メル
星宮メル東京に落ちる隕石って、大きさだけ決めればいいの?
天城ハルト
天城ハルト同じ50 mでも、もろい岩石なら空で砕け、緻密な鉄なら地面まで届く。今回は岩石質の標準的な仮定でそろえる。
落下地点東京駅付近
天体岩石質・3,000 kg/m³
突入速度20 km/s
入射角45度
地盤岩盤相当・2,500 kg/m³
人口昼間曝露人口の幅
星宮メル
星宮メルえーっ、東京駅にするなんて! 人がいっぱいいる場所のほうが、すごいことになりそう?
天城ハルト
天城ハルトその通りだ。地図上の中心を固定して比較するためでもある。ただし実際の被害は、時刻と落下地点が数kmずれるだけで大きく変わる。
CHAPTER 02 / まずはエネルギー

スケールが変わると、
エネルギーはどう変わる?

球形の岩石質天体と仮定すると、質量は密度×4/3πr³、運動エネルギーは1/2mv²で求められます。小さな天体は、このエネルギーの多くを大気に渡してしまいます。

星宮メル
星宮メルうそでしょ!? 10 mと1 kmって100倍のはずなのに、なんで結果がそんなに違うの?
天城ハルト
天城ハルト直径が10倍なら体積は10³、つまり1,000倍。速度をそろえるとエネルギーもほぼ1,000倍ずつ跳ね上がる。スケールの差は、直感よりずっと急だ。
直径質量突入前エネルギーモデル上の結末
10 m約1.57×10⁶ kg3.14×10¹⁴ J / 0.075 Mt高度約30.6 kmで空中爆発
50 m約1.96×10⁸ kg3.93×10¹⁶ J / 9.38 Mt高度約7.6 kmで空中爆発
200 m約1.26×10¹⁰ kg2.51×10¹⁸ J / 600 Mt最終クレーター直径 約3.54 km
1 km約1.57×10¹² kg3.14×10²⁰ J / 75,000 Mt最終クレーター直径 約15.6 km
5 km約1.96×10¹⁴ kg約9.38×10⁶ Mt地球規模の気候影響を考える領域
10 km約1.57×10¹⁵ kg約7.50×10⁷ Mtチクシュルーブ級に近い地球規模の衝突
100 km約1.57×10¹⁸ kg約7.50×10¹⁰ Mt生物圏を大きく組み替えうる概念比較
約9,000 km約1.15×10²⁴ kg約5.5×10¹⁶ Mt地球の重力結合エネルギーに迫る仮想衝突
CHAPTER 03 / 過去の地球で起きたこと

過去の記録を、
比較の参考にする。

空中爆発の衝撃波も、地面をえぐったクレーターも、地球には実物が残っています。東京のケースを考えるとき、こうした過去の現象が有力な参考になります。

星宮メル
星宮メル50 m級って、映画の中だけの話じゃないよね……?
天城ハルト
天城ハルト1908年のツングースカは、50〜80 m級の天体が高度約10 kmで空中爆発した有力な例だ。10〜20 Mt級とされ、広い森林がなぎ倒された。ただし人の少ない地域だった。
チェリャビンスク(2013年)では、家ほどの大きさの天体が上空で爆発しました。約440 kt TNT相当の衝撃波で窓が割れ、負傷の多くはガラス片によるものだったと言われています。
バリンジャー・クレーターは、約30〜50 mの鉄隕石が残した約1.2 km幅のクレーターです。材質の違いが、空中爆発に終わるか地表衝突に至るかを左右するのです。
星宮メル
星宮メル同じ50 mでも、東京の真上で爆発したら……全然ちがう話になっちゃうんだ。
天城ハルト
天城ハルトその通りだ。ツングースカの倒木面積を人口に掛けるのは乱暴だ。しかし「クレーターがなくても都市機能を壊せる」ことは、はっきり分かる。
CHAPTER 04 / 死傷者数の条件付き試算

都市に落ちると、
死傷者はどう試算される?

物理モデルが描き出すのは、火球、衝撃波、クレーターです。そこに東京の人口や建物を重ねていくと、現象が都市の出来事として立ち上がってきます。数字が、どんな前提から生まれるのかを確認しておきましょう。

星宮メル
星宮メルえーっ? じゃあ「死者数○万人」って、物理モデルがそのまま出してくれる数字じゃないの?
天城ハルト
天城ハルトふむ。屋内か屋外か、建物がどれだけ壊れるか、火災と救助がどうなるかで大きく動く。だから一点ではなく、前提を見える形にした幅で出す。
帯域人口入力死亡率の感度帯傷害率の感度帯
5 psi以上深刻な爆風圏の昼間人口20〜85%15〜50%
1〜5 psi外縁の昼間人口0〜10%3〜20%
熱・破片・火災地表衝突ケースで追加規模ごとに上乗せ規模ごとに上乗せ
衝撃波の帯域に人口を重ねると、物理の数字は都市の被害へと姿を変えます。ここでは、同じ落下でも条件や時間帯で影響の広がりがどう変わるかを見ていきます。
CHAPTER 05 / 規模別に読む

8つの落下を、
規模ごとに比べる。

10 mから1 kmまでは、東京と関東を範囲とする地図で読めます。5 kmを超えると、食料・気候・海洋を含む地球のシステムへと視点が移ります。100 kmと約9,000 kmは、隕石災害の範囲を超えた、惑星科学の概念比較です。

01

直径10 m:空で砕ける

高度約30.6 kmの空中爆発を想定

モデル上、10 mの岩石質天体は高高度で分解してしまいます。中心から100 mでも過圧は0.081〜0.163 psiにとどまり、深刻な建物被害圏は生じません。火球、ソニックブーム、そして観測上の驚きが、主な出来事になります。

星宮メル
星宮メル小さいなら、大丈夫なの?
天城ハルト
天城ハルト条件次第だ。チェリャビンスクでは窓ガラスが大きな負傷原因になった。この入力では上空爆発が高く、地上被害はより小さい想定になる。
10 m級隕石の被害範囲を示す図
被害範囲図: 地上の深刻な爆風圏は置かない。
10 m級隕石の空中爆発を示す図
空中爆発図: エネルギーの大半を大気へ渡す。
空中爆発高度約30.6 km
最大過圧(100 m)0.081〜0.163 psi
クレーター形成しない
条件付き死傷者試算
死亡0人を基本
負傷0〜数十人

この入力では深刻な爆風圏を置きません。破片の落下、窓ガラス、偶発事故は別モデルが必要で、広い死傷者数には変換しません。

02

直径50 m:東京の上空で起こる大規模空中爆発

高度約7.6 kmで約8.26 Mt TNT相当を大気へ放出

20 km地点で2.84〜5.68 psi、50 km地点で0.81 psi。5 psiの境界は約20 km、1 psiの境界は約45〜50 kmと読めます。クレーターはできなくても、爆風とガラス破損の範囲は首都圏一帯に広がっていくのです。

星宮メル
星宮メルツングースカくらいなら、東京のどこが一番やばいの?
天城ハルト
天城ハルト爆発の真下だけではない。半径20 kmの密集市街地に強い爆風が届く。離れた場所でも窓や外装、交通と通信の同時被害が問題になる。
50 m級隕石の被害範囲を示す図
被害範囲図: 5 psi圏 約20 km、1 psi圏 約45〜50 km。
50 m級隕石の空中爆発を示す図
空中爆発図: 上空で放出されたエネルギーが爆風になる。
空中爆発高度約7.6 km
5 psi圏半径 約20 km
昼間曝露人口1,400万〜1,800万人
条件付き死傷者試算
死亡約300万〜900万人
負傷約400万〜1,300万人

5 psi圏の死亡率20〜45%と、1〜5 psi圏の追加被害を感度帯で合算しています。空中爆発高度・建物性能・時間帯で、数字は大幅に動きます。

03

直径200 m:大気を抜け、地表へ届く

最終クレーター直径 約3.54 km、地震規模の揺れも伴う

200 mでは、破砕されながらも地表へ到達します。20 kmで13.2 psi、50 kmで2.43 psi。5 psiの境界は約35 km前後です。クレーター、火球、噴出物、爆風、地震動が、数秒から数分の時間差で次々と重なってきます。

星宮メル
星宮メルうわっ、ここからは空の爆発じゃなくて、地面そのものがえぐられちゃうんだ……。
天城ハルト
天城ハルトその通りだ。衝突点の近くはクレーターに含まれ、外では爆風に加えて噴出物や火災、道路・電力・病院の停止を考える必要がある。
200 m級隕石の被害範囲を示す図
被害範囲図: 5 psi圏は半径約35 km前後。
200 m級隕石の地表衝突を示す図
衝突図: 地表衝突、火球、噴出物を伴う。
最終クレーター直径 約3.54 km
地震規模(モデル)M 6.4
昼間曝露人口2,000万〜2,600万人
条件付き死傷者試算
死亡約800万〜1,900万人
負傷約500万〜1,500万人

5 psi圏の死亡率40〜65%に、外縁の爆風と熱・噴出物の追加被害を感度帯で合算しています。救助・医療の機能低下は未反映です。

04

直径1 km:東京の災害ではなく、関東の危機になる

最終クレーター直径 約15.6 km、エネルギーは約75,000 Mt TNT

東京駅付近そのものがクレーターに含まれる想定です。50 km地点で68.4 psi、100 km地点でも15.8 psi。5 psiの深刻な爆風圏は100 kmを大きく超え、関東全体のインフラ、医療、物流、避難先が同時に損なわれてしまいます。

星宮メル
星宮メル1 kmって、チクシュルーブほどじゃないけど……もう東京だけの話じゃないね。
天城ハルト
天城ハルトNASAも1 km級を国家規模を壊し得るサイズとして扱っている。チクシュルーブは10 kmを超える天体で、地球規模の環境変化につながった。ここはその10分の1でも、局地では十分に破局的だ。
1 km級隕石の被害範囲を示す図
被害範囲図: 5 psi圏は半径100 kmを超える。
1 km級隕石の地表衝突を示す図
衝突図: 広域の火球・噴出物・爆風を伴う。
最終クレーター直径 約15.6 km
地震規模(モデル)M 7.9
100 km地点の過圧15.8 psi
条件付き死傷者試算
死亡約2,500万〜3,600万人
負傷約600万〜1,300万人

半径100 km超の5 psi圏に4,000万人以上という人口入力を置いた感度分析です。実際には、範囲外への避難、火災、二次災害、広域支援不能が結果を左右します。

CHAPTER 07 / 根拠と限界

数字の背景を、
確認しておく。

物理モデルの出力には、不確実性があります。数字の背景にある条件を確認したうえで読むと、結果の意味が変わってきます。ここでは、その前提を整理しておきます。

参照した主な根拠
  1. Earth Impact Effects Program:Marcus、Melosh、Collinsによる衝突効果計算。空気爆風、熱、クレーター、噴出物の概算に使用。
  2. NASA Asteroid Facts:10 m、50 m、140 m、1 km級の危険性、チェリャビンスク、ツングースカ、バリンジャー・クレーターの解説。
  3. NASA Earth Observatory: Tunguska:ツングースカの推定規模と空中爆発の記述。
  4. USGS: Impact mechanics at Meteor Crater:バリンジャー・クレーターのエネルギー推定。